麻生副総理の暴言許せない

 麻生太郎副総理が7月29日に都内で開かれた講演で、「ナチス」を肯定するとんでもない暴言をはき、国の内外から厳しい批判を受けました。「ドイツ」のワイマール憲法もいつのまにか、ナチス憲法に変わっていた。だれも気がつかなった。あの手口に学んだらどうかね」と話したわけです。この暴言はナチスを肯定する許しがたい発言であり、麻生氏の閣僚としての資格はもちろんのこと、日本の政治家としの資質が厳しく問われる問題です。
 ドイツにおけるナチス独裁政権と、ワイマール憲法の機能停止は、「誰も気づかないで」起こったわけではありません。1933年1月に首相に就任したヒトラーは、就任直後に国会議事堂放火事件をでっちあげ、それを共産党員や労働組合などに濡れ衣を着せ、共産党労働組合社民党などを次々に非合法化し、最後は政党の結成まで禁止して一党独裁体制をつくりあげました。その過程のなかで、全権委任法を成立させ、ワイマール憲法を機能停止に追い込んだわけです。ナチス独裁政権の誕生と、ワイマール憲法の機能停止は、「誰も気づかないで」すすんだどころか、無法な暴力と弾圧の嵐のなかで強行されました。麻生氏の発言は、独裁政治をめざし、民主主義を否定する暴言にほかなりません。
 この暴論にたいする内外の批判の高まりの前に、麻生氏は「あしき例」としてあげたと弁明し、「ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい」という談話を発表しました。しかし、麻生氏の発言は、「あの手口をまなんだらどうか」と述べているのであって、「あしき例」として言及したものではありません。この弁明は到底なりたつものではありません。
 戦後の国際秩序は、日独伊のファシズム侵略戦争への断罪を共通の土台としてつくられています。ですから、その土台を否定するものに、国際政治に参加する資格も、日本の国政に参加する資格もないことは明かであります。
 「ナチスの手口を学んだらどうかね」と発言した麻生氏を副総理に任命した安倍総理の責任も重大です。その自民党が変えようとしている憲法改正草案は、とんでもない中身です。それは、憲法9条を変えて国防軍を創設して、海外で戦争する国に日本をつくりかえよというものです。憲法改正草案のなかには、国防軍の設置とともに、軍に軍事判所を設けられることになっていますが、石破幹事長は選挙中、この憲法改正案にふれ、国防軍から抜け出すような人がいれば、軍事裁判にかけ、死刑、若しくは懲役300年になるといいました。この発言や麻生発言には、自民党憲法改正草案の本音が表れています。いまの憲法では第18条に徴兵制を禁止する中身がうたわれていますが、自民党憲法改正草案では、それがとりはらわれ、徴兵制を可能にし、さらに、改正草案には、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動や結社を認めないとしています。政府に都合の悪い活動を禁止し、そういう団体や政党の結社を認めないという点では、戦前の治安維持法と同じです。改憲勢力は、いまの憲法は古いと宣伝していますが、自民党の改正草案こそ、戦前の社会への逆戻りでにほかなりません。